粉のシミュレーションは粒子一つ一つの集団運動を解くということ

【はじめに:DEMとは?】

近年、様々な分野でシミュレーションが行われることが増えてきました。 その中で、本シリーズでは粉のシミュレーションについて詳しく紹介していきたいと思います。

粉のシミュレーション方法の中で、離散要素法【discrete element method:DEM】は世界的に広く用いられている手法の一つです。 DEMの考え方はとてもシンプルで、粒子一粒の動きを模擬することでその集合体である粉全体の挙動を表現するというものです。したがって、計算は粒子一つひとつの動きに対して行われています。

粉体シミュレーションでは粒子一つ一つの集団運動を計算します。

ということで、今回はDEMで考慮されている一つの粒子の動きに焦点を当てて解説していきたいと思います。

【粉の動き】

粉の動きは「並進運動」と「回転運動」の2つに分けられます。 反対に、粉の動きはこの2つの運動の組み合わせのみであらわすことができます。

粉体シミュレーションでは粉体を構成する一粒一粒に対して並進運動と回転運動を解きます。

並進運動

並進運動は以下のような形であらわされます。

粉体シミュレーションで計算する1粒子に対する並進運動の式は高校で習った運動方程式です。

はたらく力(力の項の内容)は「重力」、粉同士の「接触力」、「付着力」、流体を考慮する時は「流体抗力」等の様々な力を考慮しますが、扱う力の種類が増えた場合でも右辺に足しあわされるのみで、式の形が大きく変化するわけではありません。

回転運動

回転運動は以下のような形であらわされます。

粉体シミュレーションで計算する1粒子に対する回転運動の式は回転運動方程式です。

はたらく力は「接触トルク」や「回転抵抗トルク」等を考慮しますが、並進運動と同様に右辺に足しあわされる形で表現し、式の形は大きく変化しません。

【ちょこっとメモ:本当に並進運動と回転運動だけ?】

実際の粉体プロセスの中では粉体の「変形」も含まれます。圧粉プロセスや粉砕プロセスで必要となる粒子の動きとなりますが、DEMにおいては粒子が変形しない「剛体粒子」が仮定されているため、並進と回転のみを考慮するものとなっています。

実際の現象では粉体1粒子の変形や分割がありますが、粉体シミュレーションでは1粒子が変形しない剛体粒子が仮定されています。

一方で最近の粉体シミュレーションではBonded Particle Model(BPM)という手法を用いると1粒子の変形や分割を考えることができるようになってまいりました。

Bonded Particle Modelとは主に岩石やコンクリートなどの脆性材料(もろい材料)の力学的挙動をシミュレーションするために用いられる手法です。離散要素法(DEM: Discrete Element Method)の一種で、微小な粒子同士を「接着(Bond)」させることで、一つの固体を表現します。

この手法は実挙動を再現するうえで非常に強力な手法ではありますが、粉体の1粒子を表現するために複数粒子を用いるこの手法では粒子数が膨大になり、計算コストが非常に高くなってしまいます。このように、微細な変形まで追おうとすると膨大な計算時間が必要になりますが、多くの産業プロセスにおいて重要なのは、「粉体全体の流れや、実用的な時間内でのシミュレーション結果」ではないでしょうか。

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とはいえ、研究開発の内容によっては「どうしても一粒子の破砕挙動を詳細に見たい」「BPMを用いた特殊な解析が必要だ」というケースもあるかと思います。

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